初回の診断でうつ病だとわかれば治療がスタートし、定期的に診察を受けることになります。その際には何かに焦点を当てた精神療法ばかりを行うわけではありません。まずは、前回の受診から診察当日前の様子がきかれ、これまでの治療過程が予定通りに進んでいるのか、治療にとって障害となるような出来事や本人にとってよい出来事がなかったかを聞く一般的なカウンセリングも大事になります。なぜなら、それにより治療の順序が決定されるからです。加えて、診断に間違いがなかったかの判断も可能になります。先に行った精神療法は日常生活の中でどう活かされたのか、有効あるいは不十分な面は何か効果の有無などが通常の診察の中で判断されます。たとえば、うつ病が改善しつつあるので、通勤や通学をする際の緊張緩和のために、自律訓練法を実施したものの、うまくいっていない場合には、どの程度までうまくいっているのかはカウンセリングを通じて判断し、再指導することになります。薬物に関する診察ももちろん大事で集められた情報から同じ治療を継続するか変更が必要かの判断になるわけです。たとえば、良く眠れたというのは本人にとって良い作用なのか悪い作用なのかを考える必要があります。抗うつ剤などの薬物の効果は精神療法にも影響しますしその逆も然りです。そのため、毎回のカウンセリングが精神療法や薬物療法を効果的に進めるために必要になります。カウンセリングを行う中で、診断が適切であるのか疑問が生まれることもあります。たとえば、うつ病の症状の一つに強い不安というものがありますが、不安があることで受診に至る前の症状を呈しているのか、その逆なのか分かりにくい時期があります。きっかけとうつの関係を明らかにすることは難しいことも多いです。きっかけと見えているだけで、実際は異なるということもあります。たとえば、不安があると過敏な状態であるため、うつを体験するような出来事に遭遇しやすいのも事実です。病気の診断においては、不安イコール抑鬱状態というものもあり、医師が得られた情報からだけでは判断が曖昧になりやすいのが実情です。不安症状と抑鬱症状が同程度ある時には、ニワトリと卵のような関係で、どちらが先に起きたかわからない場合もあるので注意が必要になります。この場合、不安をとる抗不安薬のみが最初に処方されることがあります。これはもし不安が主症状であるなら抗不安薬で症状が軽減する可能性が高いからです。しかし、効果が得られないような場合には、うつと診断しやすくなります。もし先に抗鬱剤を処方され服用してしまうと、抗鬱剤はどちらにも効果を発揮するので両方とも一度に消えてしまい鑑別が難しくなるので気を付けなくてはなりません。このような治療の流れで最適な方法が選択されれば早い回復を見込むことも可能です。